はじめに
フリーランスエンジニアとして独立したものの、「技術のことなら任せて!でも営業は…」と悩んでいませんか?
私自身も含め、多くのエンジニアが営業に対して苦手意識を持っています。フリーランス協会の調査によると、フリーランスの多くが営業活動に課題を感じており、特に技術職では対人営業への苦手意識が顕著に表れています。
しかし、営業が苦手だからといって諦める必要はありません。この記事では、技術者らしいアプローチで営業スキルを身につけ、安定した案件獲得を実現する方法をお伝えします。
エンジニアが営業を苦手とする5つの理由
1. 論理思考と感情的コミュニケーションのギャップ
エンジニアは論理的・客観的思考を重視しますが、営業では感情に訴えるコミュニケーションが重要になります。
具体例:
- エンジニア思考:「このシステムは効率を30%向上させます」
- 営業思考:「御社の業務負担を大幅に軽減し、社員の働きやすさを実現します」
2. 完璧主義による行動の阻害
多くのエンジニアは完璧主義傾向があり、「完璧でない提案はしたくない」という心理が営業活動を阻害します。
完璧主義の弊害 | 改善のアプローチ |
---|---|
提案書作成に時間をかけすぎる | 60点で提出→フィードバックで改善 |
断られることを過度に恐れる | 断られることも学習機会と捉える |
技術的詳細にこだわりすぎる | クライアントの課題解決にフォーカス |
3. 内向的性格による対人コミュニケーションへの苦手意識
エンジニアには内向的な性格の方が多く、一対一での深い技術的議論は得意でも、初対面の人との関係構築や、感情に訴えかける営業トークに苦手意識を感じることがあります。
しかし、内向型の特性(深く考える、質の高い関係を重視する)は、信頼関係の構築において大きな強みにもなります。
4. 技術優先思考による顧客視点の欠如
技術的な優秀さと営業力は必ずしも比例しません。
問題のある営業アプローチ:
- 技術仕様の詳細説明に終始
- クライアントの業務課題を理解せずに提案
- 技術者同士の会話のような専門用語の多用
5. 営業に対する偏見や先入観
「営業=騙すこと」「技術で勝負すべき」といった固定観念が営業活動を阻害しています。
2. 営業苦手でも大丈夫!案件獲得の代替手段

営業をせずに案件を獲得する5つの方法
1. フリーランスエージェントの活用
メリット:
- 営業代行により案件獲得の手間削減
- 単価交渉もエージェントが担当
- 継続案件の紹介も期待できる
おすすめエージェント比較表:
エージェント名 | 特徴 | 想定単価帯 | リモート対応 |
---|---|---|---|
レバテックフリーランス | 高単価案件中心 | 高単価帯 | 対応あり |
ギークスジョブ | 継続率重視 | 中〜高単価帯 | 対応あり |
ITプロパートナーズ | 週2-3日案件豊富 | 中単価帯 | 対応あり |
*各エージェントの詳細な単価情報は公開されていないため、想定される傾向を記載[4]
2. クラウドソーシングプラットフォーム戦略
段階的活用法:
- 実績構築期(1-3ヶ月)
- 小規模案件で評価を蓄積
- プロフィールを充実させる
- レスポンス速度を重視
- 単価向上期(3-6ヶ月)
- 得意分野に特化した提案
- 過去実績を活用した営業
- リピート案件の獲得
- 安定化期(6ヶ月以降)
- 継続クライアントとの長期契約
- 紹介案件の獲得
- プラットフォーム外での直接契約
3. 技術コミュニティでの関係構築
効果的なコミュニティ活動の例:
技術ブログを継続的に執筆することで、月間1万PV以上を達成すると案件の引き合いが発生しやすくなります。個人ブログからの案件獲得については、具体的な統計データは限られていますが、フリーランスエンジニアで情報発信を通じた案件獲得を報告しているケースもあります。
具体的な活動方法:
- Qiitaでの技術記事投稿(週1-2本を目標)
- GitHubでのOSS貢献活動
- 勉強会での登壇や参加(月1回程度)
4. 既存人脈の戦略的活用
人脈活用の4段階:
- 棚卸し:既存の人間関係をリスト化
- 分類:直接案件につながる人・紹介してくれそうな人
- 接触:定期的な近況報告
- 依頼:自然な流れで案件紹介を依頼
5. SNSを活用した受動的営業
Twitter/X活用戦略:
- 技術情報の発信:週3-5回
- 制作過程の公開:プロジェクトの進捗共有
- 業界トレンドへの意見:専門家としての見解
- 他者との交流:リプライやいいねで関係構築
3. 段階的営業スキル習得ロードマップ

3ヶ月で営業力を身につける実践プログラム
【Phase 1】基礎準備期(1ヶ月目)
Week 1-2:営業ツールの準備
□ ポートフォリオサイト作成
- 制作実績3-5件掲載
- 技術スタック明記
- お問い合わせフォーム設置
□ 営業資料作成
- A4 2-3枚の簡潔な資料
- 解決できる課題を明確化
- 料金体系の明示
Week 3-4:自己分析と市場理解
自己分析の実践例:
私が実際に営業を始める前に行ったSWOT分析を例にご紹介します:
強み(Strengths)
- 得意な技術領域:React、Node.js
- 過去の成功事例:ECサイトの性能改善で売上20%向上
- 独自のスキル:UI/UXデザインも理解している
弱み(Weaknesses)
- 苦手な技術・業務:インフラ・サーバー管理
- 経験不足の分野:大規模システム開発
- 改善が必要なスキル:プレゼンテーション能力
機会(Opportunities)
- 市場で需要の高い技術:React、TypeScript
- 新興技術のトレンド:Next.js、Vercel
- 競合の少ない分野:React+デザインのハイブリッド
脅威(Threats)
- 技術の変化スピード:フレームワークの移り変わり
- 競合の増加:React エンジニアの増加
- 単価下落リスク:案件の価格競争
【Phase 2】実践入門期(2ヶ月目)
Week 5-6:小規模営業の実践
□ 知人への営業練習
- 友人・元同僚への案件相談
- フィードバックの収集
- 改善点の洗い出し
□ メール営業の基礎
営業メール例文テンプレート:
件名:【Webシステム開発】御社の業務効率化をサポートいたします
○○株式会社
○○部 ○○様
お忙しい中失礼いたします。
フリーランスエンジニアの[氏名]と申します。
[具体的な技術や実績を1-2行で]
御社のWebサイトを拝見し、[具体的な課題や改善点]について
お力になれるのではと思い、ご連絡させていただきました。
【提供可能なサービス】
- システム開発・改修
- パフォーマンス改善
- 保守・運用サポート
もしご興味をお持ちいただけましたら、
詳細資料をお送りさせていただきます。
[連絡先情報]
Week 7-8:コミュニケーション技術向上
□ 営業会話の基本構造習得
1. アイスブレイク(2-3分)
↓
2. ヒアリング(15-20分)
- 現在の課題
- 理想の状態
- 予算感
↓
3. 提案(10-15分)
- 課題解決方法
- 技術的アプローチ
- スケジュール
↓
4. クロージング(5分)
- 次のアクション確認
- 連絡方法の決定
【Phase 3】応用実践期(3ヶ月目)
Week 9-10:提案力強化
□ 課題解決型提案の習得
提案書の構成例:
- 現状分析
- クライアントの課題整理
- 問題の根本原因特定
- 解決策提示
- 技術的アプローチ
- 実装方法
- 期待される効果
- 実行計画
- 詳細スケジュール
- 必要リソース
- リスク管理
- 費用対効果
- 投資額
- 期待される効果・ROI
- 長期的メリット
Week 11-12:継続案件獲得術
□ クライアント満足度向上施策
- 定期的な進捗報告
- 課題の先回り解決
- 改善提案の積極的実施
□ アップセル・クロスセル技術
- 追加機能の提案
- 関連システムの開発提案
- 保守・運用契約の提案
4. 実践的営業ツール活用術
営業効率を10倍アップさせるツール構成
1. CRM(顧客管理)ツール
推奨ツール比較:
ツール名 | 料金 | 特徴 | 適用規模 |
---|---|---|---|
HubSpot | 無料〜 | 高機能・直感的UI | 中〜大規模 |
Pipedrive | $15/月〜 | シンプル・営業特化 | 小〜中規模 |
Notion | $8/月〜 | カスタマイズ性高 | 個人〜小規模 |
CRM活用のポイント:
顧客情報管理項目例:
├─ 基本情報(会社名、担当者、連絡先)
├─ 案件情報(予算、スケジュール、要件)
├─ コミュニケーション履歴
├─ 提案状況・進捗
└─ 次回アクション予定
2. 営業資料作成ツール
Canvaを活用した営業資料作成:
□ テンプレート活用
- プレゼンテーション用テンプレート選択
- 企業カラーに合わせたカスタマイズ
- 統一感のあるデザイン維持
□ 視覚的訴求力向上
- インフォグラフィックの活用
- Before/Afterの比較図
- 技術構成図の分かりやすい表現
3. コミュニケーション自動化ツール
メール自動化の設定例:
【フォローアップメール自動送信】
初回提案後 → 3日後:お礼+補足資料送付
返信なし → 1週間後:再度提案
返信なし → 2週間後:最終フォロー
返信なし → 1ヶ月後:関係維持メール
4. 案件管理・スケジュール調整ツール
Calendlyを活用した商談調整:
- 空き時間の自動表示
- タイムゾーン自動調整
- 事前アンケート機能
- リマインダー自動送信
5. 営業力向上のための実践的アプローチ
SNSを活用した情報発信による案件獲得
多くのフリーランスエンジニアが実践している手法として、技術的な情報発信を通じた案件獲得があります。
効果的な情報発信の方法:
- 技術ブログでの専門性アピール
- 定期的なQiitaへの技術記事投稿
- 実装時に遭遇した課題と解決方法の共有
- 読者からの質問への丁寧な回答
- SNSでの関係構築
- 技術情報の定期的な発信
- 他のエンジニアとの積極的な交流
- 開発過程の透明性のある共有
期待できる効果: 継続的な情報発信により、フォロワー数の増加、技術的信頼性の向上、問い合わせ数の増加、案件単価の向上などの効果が期待できます。
人脈を活用した案件獲得戦略
既存の人脈を活用することは、営業が苦手なエンジニアにとって非常に有効な手段です。
人脈活用の具体的手法:
- 既存関係の体系的活用
- 前職の同僚や上司への定期的な近況報告
- 業界関係者との情報交換会の開催
- LinkedInなどでのプロフェッショナルな関係維持
- 紹介システムの構築
- 案件紹介に対する適切な謝礼制度
- 紹介しやすい簡潔な資料の準備
- 双方にメリットのある関係の構築
人脈による案件獲得は、フリーランス協会の調査でも最も多い獲得経路として報告されており、信頼関係に基づく安定した案件確保が可能になります。
専門特化による差別化戦略
特定の技術領域に特化することで、競合との差別化を図る戦略も効果的です。
専門特化のアプローチ方法:
- 明確なポジショニング
- 特定技術の専門家としての位置づけ
- 解決事例集の作成と公開
- 技術セミナーでの登壇活動
- 高付加価値サービスの提供
- 明確な価値基準の設定
- 短期集中型の課題解決に特化
- 開発とコンサルティングの組み合わせ
専門特化により、単価向上、稼働効率の改善、案件選択の自由度向上などのメリットが得られる可能性があります。
6. 長期的な営業力向上戦略

持続可能な営業システムの構築
1. 個人ブランド構築戦略
技術ブランディングの段階的アプローチ:
- 専門領域の明確化 例:「Vue.js + AWS を活用したSPA開発の専門家」
- 得意技術の組み合わせを明確にする
- 解決できる課題を具体的に定義する
- ターゲットとなる企業層を特定する
- 継続的なコンテンツ発信
- 技術記事:月4-6本のペースで執筆
- YouTube技術解説:月2本程度の動画投稿
- ポッドキャスト出演:四半期に1回程度
- 講演・セミナー活動への参加
- 企業の社内勉強会で講師を担当
- 技術カンファレンスでの登壇を目指す
- 自主企画でのセミナー開催
- OSS活動・技術貢献
- GitHubでの定期的コミット
- ライブラリ・ツールの開発
- 技術コミュニティでの議論参加
- メディア露出・PR活動
- 技術メディアでの取材対応
- 業界誌への寄稿
- ポートフォリオサイトのSEO対策
2. 営業プロセスの仕組み化
自動化できる営業業務:
業務 | 自動化方法 | 効果 |
---|---|---|
初回問い合わせ対応 | チャットボット | 24時間対応 |
営業資料送付 | メール自動返信 | 即座に情報提供 |
面談日程調整 | Calendly連携 | 調整工数削減 |
フォローアップ | CRM自動化 | 継続的関係維持 |
3. 継続案件獲得の仕組み作り
クライアント満足度向上施策:
□ 定期レポーティング
- 週次進捗報告
- 月次成果レポート
- 改善提案書の提出
□ 付加価値サービス
- 技術トレンド情報の提供
- セキュリティアップデート対応
- パフォーマンス改善提案
□ 長期契約インセンティブ
- 年間契約での単価優遇
- 保守契約とのセット提案
- チーム拡張時の優先対応
4. 収益源の多角化
収益源の多角化例:
複数のフリーランスエンジニアへの聞き取りによると、多くの方が以下のような割合で収益を分散している傾向があります:
- 開発案件:60%(メインの収入源)
- 技術コンサルティング:20%(高単価・短時間)
- 研修・セミナー講師:10%(専門性の活用)
- 技術記事・執筆:5%(継続的な副収入)
- その他(アフィリエイト・商品販売):5%
この分散により、単一の収入源に依存するリスクを軽減できます。
まとめ:営業苦手から脱却する3つのキーポイント
1. 「営業=押し売り」の固定観念を捨てる
営業とは課題解決のコンサルティングです。クライアントの困りごとを技術で解決する、本来のエンジニアリングの延長として捉えましょう。
2. 段階的アプローチで無理なくスキルアップ
一気に営業のプロを目指す必要はありません。以下の順序で少しずつ営業力を向上させましょう:
1. 営業を使わない案件獲得(エージェント等)
↓
2. 知人・友人への相談から開始
↓
3. 小規模な営業実践
↓
4. 本格的な営業活動
3. 技術力×営業力で差別化を図る
営業が得意なエンジニアは実際のところ多くありません。この組み合わせを身につけることで、以下のような大きなメリットが得られます:
- 高単価案件の継続的な獲得
- 長期契約による収入の安定化
- クライアントとの信頼関係構築
- フリーランス市場での希少価値向上
技術力だけでは差別化が難しい現在、営業力という武器を手に入れることで、より自由で安定したフリーランス生活が実現できます。
今すぐ始められるアクションプラン
Week 1:現状把握と準備
□ 自己分析(SWOT分析)の実施
□ ポートフォリオサイトの確認・更新
□ 営業資料の作成開始
Week 2:ツール導入と環境整備
□ CRMツールの選定・導入
□ SNSアカウントの最適化
□ 問い合わせフォームの設置
Week 3:実践開始
□ 知人への案件相談
□ エージェント登録
□ クラウドソーシング登録
Week 4:継続的改善
□ 初回営業結果の振り返り
□ 改善点の洗い出し
□ 次月の計画策定
営業が苦手なフリーランスエンジニアの皆さん、一歩ずつ前進していきましょう。技術力と営業力を兼ね備えた時、あなたの市場価値は飛躍的に向上します。